怪奇小話★異郷の空
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入学当初は、大学の寮に住んでいたが、夏は暑く、寝苦しい。
その上、タバコの吸殻や食べ物(残り物)など、何でもトイレの中につけてしまうルーミィ(ルームメイト)のおかげで、トイレは年中、逆流していた。
そんなこともあって、新学期がはじまるまでに引越しをしようと、アパートを探すことにした。
条件は学校や駅に近く、環境・治安がよいところ。わがままを言えば「家賃も安くFurnished(家具付)が好ましい」。
あれこれと思いをめぐらせながら、期待に胸をふくらませた。
しかし、現実は厳しかった・・・。
案内された部屋は、どれもこれも数百年の歴史が語る“薄暗く、カビ臭い”部屋ばかりだった。ただ、ここでわがままをいってしまえば、一生みつからないとも思ったので、とりあえず、2,3日中に決めるとのことを伝えた。
部屋探しを始めて5日目ほど経った。もう少し条件を下げれば、ひょっとして見つかるかもしれない。その翌日、再び不動産屋を訪ねた。すると、入口近くのデスクに座っていた彼は、私の顔を見るなり、「家具付のいい部屋が見つかったから、今から案内するよ」と言った。
いい部屋ならば、とりあえずは見てみる価値はある。
答えはもちろん、OKだ。
交通量が激しいメインストリート(Boylston St.)をダウンタウンに向かって歩くこと10分。建物はその通り沿いにあった。1階は24時間オープンのピザ屋。その隣も※24時間オープンのヘッドショップだ。あまり環境がいいとは言えないが、人通りが激しい分、かえって安全かもしれないと思って、とにかく家具付のアパートを見せてもらうことにした。※ヘッドショップとは煙草、薬草、パイプ、雑貨などが陳列されているマニアックな店
通りに面したドアから中ドアへ入ると、2Aと記されたドアへと直行する階段があった。
ぎしぎし音をたてながら階段を上がった。
廊下の右側はキッチン、バス、ベッドルーム、そして突き当たりはリビングルーム。ベッドルームやキッチンは暗いけど、広々としたリビングは明るく、窓からは路地裏の大きな木が見える。
しかも、ファーニストだから、ダイニングテーブル、ベッド、カウチ(二つ)がついている。
駅や学校まで2ブロック。歩いて10分ほどの距離だ。
「いいかもしれない・・・」。
早速、その日のうちに契約を済ませて、この建物の二階に落ち着くことにした。
路地に枯れ葉が舞う10月も半ばになると、街中の店は、ハロウィンを祝うかぼちゃと黒猫の置物で賑わいを見せている。その年の秋は、インディアンサマー(小春日和)で比較的暖かな日が多かったので、暇さえあれば、フリーダムトレイルやドライブを楽しんだ。
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